初めてキハダマグロを釣り上げたのは、マグロキャスティングに挑戦してから5年目の夏でした。重さは約30kg。ファイト時間はわずか5分ほどでしたが、その1本にたどり着くまでには、数え切れない空振りの釣行がありました。この記事は、九州の海でカサゴを釣った少年時代から、相模湾で初キハダを手にするまでの体験談です。そして、この体験こそが釣り情報サイト「釣りちゃん」を立ち上げた原点でもあります。マグロキャスティングという釣りの入り口として、読んでいただけるとうれしいです。
この記事の3つのポイント #
- 淡水のルアー釣り出身でも、相模湾のマグロキャスティングには飛び込める
- 初釣行から5年、空振りの数だけタックルと経験が増えていった記録
- 初キハダ30kgの体験が、釣り情報サイト「釣りちゃん」の原点になった
原点は九州の海と川 #
釣りの記憶の始まりは、九州で過ごした小学校低学年のころです。親に連れられてボートに乗り、右も左も分からないまま竿を出していると、「釣れてるよ」と声をかけられました。慌てて巻き上げると、竿の先にはカサゴがぶら下がっていました。自分では釣った実感すらない、それが人生の1匹目です。
高学年になると、家の近くの川でフナや鯉、ナマズを狙うようになりました。ダムに足を延ばして鯉やブラックバスも釣りました。気づけば釣りは一番の遊びになっていましたが、フィールドはずっと淡水で、海釣りにはほとんど縁がありませんでした。
ブランクを経て、東京で釣りを再開 #
社会人になると、釣りからは自然と遠ざかりました。仕事は忙しく、東京への長期出張もあり、竿を握る時間はほとんど取れませんでした。
転機は転職です。東京に住むことになり、そこで釣りをする友達ができました。それをきっかけに、長く止まっていた釣りを再開したのが2018年ごろです。再開後は乗合船での海釣りが中心になり、アジ、タイ、マルイカなどを楽しむようになりました。九州の川で竿を出していた少年が、気づけば船の上に戻っていました。

「相模湾でマグロが釣れる、しかもルアーで」 #
そんなある日、相模湾でマグロが釣れるという話を知りました。しかも、ルアーで狙えるというのです。マグロは遠い海の魚というイメージしかなかった私には衝撃でした。近場でそんな釣りができるのか、と。ちょうど友達に誘われたこともあり、様子見のつもりで挑戦してみることにしました。
とはいえ、マグロの知識はゼロです。釣具屋の店員さんに「8月に相模湾でルアーのマグロ釣りに行くので、一式そろえたい」と伝え、すべて選んでもらいました。
ルアー釣りの経験はブラックバスが中心だったので、店員さんが手に取る160〜180mmのルアーには度肝を抜かれました。ロッドもリールもラインもリーダーも、接続用のリングまで、今まで使っていた道具とはかけ離れています。準備をしているだけなのに、何もかもが別世界でした。よく考えれば狙う魚のサイズがまるで違うので、当然と言えば当然です。
初めてのマグロ船で見た光景 #
初釣行では、心強い味方がいました。友達の知り合いにマグロをよく釣っている方がいて、初挑戦の私たちに教えるために同乗してくれたのです。今までのタックルとは何もかも違うため、キャストの仕方から一つひとつ丁寧に教わりました。
船が向かったのは、見渡す限り一面が海という、今までの乗合船とはまったく違う世界でした。船長はレーダーを見つめ、鳥の動きやマグロが跳ねたときの水しぶきに目を配りながら、ひたすら反応を探し続けます。反応があれば、体験したことのないスピードで現場へ向かい、魚の気配を感じながら近くで待機する。その繰り返しです。
そうしているうちに、忘れられない場面に出くわしました。ものすごい数の鳥が一斉に水面へ突っ込み、その下ではマグロがベイトを追って飛び跳ねている。水面の小魚を、上からは鳥が、下からはマグロが狙っているのです。この光景を見られただけでも来た価値があった、と本気で思いました。
もっとも、余韻に浸っている場合ではありません。チャンスなので全員が一斉にルアーをキャストします。そんな中、友達のルアーにヒットしました。聞いたことのない甲高いドラグ音が響き、ラインが猛烈な勢いで引き出されていきます。しかし50mほど走られたところで、ブチッ。ラインブレイクでした。どれほどの大物だったのか、今でも見てみたかったと思います。
その後もマグロが遠くで跳ねるたびに猛スピードで駆けつけましたが、到着する前に消えてしまう、の繰り返し。結局、初めてのマグロ釣りは同乗した誰も釣れずに終わりました。毎回釣れる釣りではない。それも含めて、身をもって知った1日でした。
それでも、マグロは本当にルアーで釣れる。その確信だけははっきりと残り、どうしても自分の手で釣り上げたくなっていました。
マグロ釣りは甘くない — 通い続けた5年間 #
その年から、シーズンの7月中旬〜9月中旬に相模湾へ通うようになりました。
ただ、マグロ釣りはそんなに甘くありませんでした。出船してもマグロの跳ねをまったく見られない日、反応すら出ない日も珍しくありません。走り回っても、キャストのチャンスが一度もないまま帰港する日もあります。
そのぶん、道具は少しずつ増えていきました。マグロのチャンスは一瞬で、ラインブレイクなどのトラブルで結び直している間に群れが消えてしまうこともあります。そこで、トップウォーター用とシンキング用をそれぞれ2本ずつ、ルアーを付けた状態で構えておく4本体制になりました。さらにカツオが一緒に回っていることも多いので、少しライトなタックルも1本。合計5本の態勢で、準備だけはいつ本番が来てもいいように整っていました。

5年目の夏、ついに初キハダ30kg #
その日も、船長がナブラを見つけて猛スピードで駆けつけてくれました。ナブラとは、魚の群れが小魚を追いつめて水面が騒がしくなる状態のことです。ただ、このときは表層でバシャバシャやっている様子ではなかったため、シンキングルアーを選んでキャストし、少し沈めて待ちました。
すると、ゴツゴツという感触。しかしラインは出ていきません。回収しようとリールを巻き始めると、ずしりとした重みが乗りました。最初はシイラが食ったのかと思い、そのままゴリゴリ巻いていました。ところが途中でいきなりラインが引き出され、「これはマグロか?」と一気に心拍数が上がりました。
魚はすぐに反転してこちらへ向かってきたので、緩まないように勢いよく巻き続けます。ずっしりとした重みを感じながら巻いていくと、水中にキハダの姿が見えました。心臓が跳ねました。幸い船際の攻防はなく、するりと浮いてきたところを船長がモリで仕留め、船内へ上げてくれました。

ファイト時間はわずか5分ほど。重さは約30kgでした。初挑戦から5年、ようやく目標を達成した安堵と「ついにやった」という実感で、釣り上げてからの方がドキドキしていたかもしれません。
この1本は、私ひとりの力では獲れませんでした。的確に船を寄せてくれた船長、そして一緒に乗ってサポートしてくれたみんなのおかげです。感謝でいっぱいの、忘れられない1本になりました。
余談をひとつ。このとき握っていたのは、4本の中で一番安い、保険用に最後に買い足したロッドでした。その日の状況に合いそうなルアーが、たまたまそのロッドに付いていた。理由はそれだけです。それでも、5年かけて揃えたタックルのうち一番手頃な1本が、初めてのキハダを連れてきてくれました。道具の値段が釣果を決めるわけではない——これからマグロキャスティングを始める方にこそ、伝えたい事実です。
この日のタックル #
- ロッド: シマノ グラップラーBB タイプC S82H(2021年モデル。4本の中で一番安い保険用の1本)
- リール: シマノ 15ツインパワーSW 14000XG
- ルアー: ヤマリア ローデッド LS140 ケイムラカタクチ(シンキング)
- ライン / リーダー: PE5号 / 100ポンド
タックル選びの考え方や、それぞれの使い分けは、別の記事で詳しく紹介していく予定です。
なぜ釣り情報サイトを作ったのか #
5年かかって1本にたどり着いた経験は、そのまま「調べて、試して、また調べる」の積み重ねでした。タックルは何を狙うかで選び方が大きく変わります。私自身、最初は釣具屋さんに丸ごと頼るしかありませんでした。だからこそ、これからマグロ釣りを始める人の参考になる情報を残したいと思うようになりました。
釣りちゃんでは、マグロキャスティングを中心に、私が実際にやっているマグロ以外の釣りについても記事として記録していきます。誰かの参考になればうれしい。そして何より、調べて書くことで自分の知識も増えていく。その両方が、このサイトを続ける理由です。
まとめ #
九州の海で釣ったカサゴから始まり、川とダムのルアー釣りに熱中し、ブランクを経て東京で海釣りを再開。そして相模湾で「ルアーでマグロが釣れる」と知ってから5年、ようやく初キハダ30kgにたどり着きました。
- マグロキャスティングは、淡水ルアー出身でも一歩ずつ始められます
- 初めての1本は、4本の中で一番安い保険用ロッドが連れてきてくれました
- 5年目の1本は、船長と仲間のサポートがあってこそでした
これからマグロキャスティングを始める方の背中を、この記事が少しでも押せたらうれしいです。次回からは、タックル選びや実釣の記録も少しずつ書いていきます。
about the author
マグロキャスティングを軸に、ジギング・エギング・ショアの実釣を本音で発信。2018 年再開、相模湾を主戦場に活動中。
