エギ王だけで 46 本のカラーを持つ筆者に、根本的な疑問が生まれました。そもそもイカに、この色の違いは見えているのか?
調べた答えは意外なものでした。イカは色を識別できないとする説が有力なのです。ではムラムラチェリーのピンクも、軍艦グリーンの緑も、イカには意味がないのか。カラーで釣果が変わるように見えるのはなぜなのか。この記事では、イカの視覚の話を公式情報と研究知見ベースで整理して、「カラー選びはどう変わるべきか」という実用の結論まで持っていきます。

この記事の 3 つのポイント #
- イカの眼は明暗に特化しています。ヤマシタ公式も「イカの眼はヒトとは異なり、明暗の差を感じとる機能に特化している」と明記しており、色を識別できないとする説が有力です
- それでもカラーで釣果が変わるのは、効いているのが色相ではなく明暗のコントラスト・光の波長・発光だからです
- 490 グローの「490」は、多くのイカが最も感知しやすいとされる波長 490nm のこと。筆者の夜の実績 3 杯がすべて 490 グローだったのは、理屈どおりでした
イカは色を認識できる? #
できないとする説が有力です。色を見分けるための視物質を 1 種類しか持たないため、イカの世界は色ではなく「明暗」でできていると考えられています。
人間の眼は複数種類の視物質 (光を感じるタンパク質) を持ち、その反応の差で色を識別しています。イカはこの視物質が 1 種類だけとされ、仕組みの上で色の区別ができません。白黒写真の世界を想像すると近いはずです (ホタルイカのように例外的な種もいるとされますが、アオリイカは 1 種類側です)。
これは釣具メーカーも前提にしている話で、ヤマシタ公式の 490 グロー解説には「イカの眼はヒトとは異なり光が限られた海中で生きるために、明暗の差を感じとる機能に特化している」とあります (2026 年 8 月時点)。カラー戦略で知られるメーカー自身が、「色」ではなく「明暗」でエギを設計しているわけです。
なおイカの眼にはもう 1 つ面白い話があり、網膜に偏光 (光の振動方向) を感じる構造があるとする研究知見もあります。人間に見えない光の性質を感じている可能性があるということで、ここは後で布のラメの話につながります。
では「490 グロー」とは何なのか? #
「多くのイカが最も感知しやすいとされる波長 490nm の光」で発光する下地です。色ではなく、イカにとっての「一番明るい光」を出す装置と理解するのが正確です。
公式の説明では、490nm の発光は「暗いマヅメ時や夜間の海中で、イカにとって最も大きな明暗の差 (光のコントラスト) を作り出し、効果的にアピール」するとされています。人間の眼には青緑色に見えますが、「イカに青緑が人気」なのではなく、イカの視感度のピークに合わせて明暗差を最大化している、というのが正体です。
筆者のぶちぶちコーラルの発光を暗闇で撮影すると、ボディ全体がまだらに光ります。これも公式説明どおりで、コーラルは「虹の下地の間から漏れ出すまだら模様の 490 グロー発光」という設計。イカの眼から見れば、暗い海に浮かぶ強い明暗パターンです。
面白いのは、同じ 490 グローでも光らせ方に個性があること。手持ちのホタルエビは「490 グローボディの発光を最も発揮する」とされる全面発光タイプで、コーラルのまだら発光と並べて光らせると違いは一目瞭然です。全面の強い光か、まだらの明暗パターンか。どちらもイカの明暗の世界に向けた、別のアプローチです。なお撮影して分かったのですが、蓄光の光は消灯後の数十秒で目に見えて弱まっていきます。実釣で使う時は、時々ライトを当てて再充電してやると発光アピールが保てます。

色が見えないなら、カラーは意味がないのか? #
意味はあります。ただし効いているのは「何色か」ではなく、①明暗のコントラスト ②光の波長 (届く距離) ③発光 ④偏光、の 4 つだと整理できます。
- 明暗のコントラスト: 赤テープや紫テープが夜に強いとされるのは、赤く見えるからではありません。光の少ない水中で光を吸収して濃いシルエットを作るからです。イカの明暗の世界では「黒い影」こそ最強のアピールになる場面があります
- 波長 = 光が届く距離: 赤系の光は水中で早く吸収されて消え、青緑系は遠くまで届きます。同じ「光る」でも、どこまで見せられるかが波長で変わります。490nm はこの点でも水中向きです
- 発光: 蓄光 (グロー) は暗闇で自力の明暗差を作り、紫外線発光 (ケイムラやネオンブライト) は人間に見えない紫外線を可視の明るさに変換します。どちらも「色を塗る」のではなく「光を作る」技術です
- 偏光: ラメ布のギラつきは、偏光を感じられるとされるイカの眼には、人間が見る以上の情報になっている可能性があります
つまりエギのカラーとは、イカに対しては「明暗パターンと光の演出」のバリエーションなのです。カラー戦記の記事で「下地 4 系統で考える」と整理しましたが、その下地こそが光の演出装置であり、この記事はその理論的な裏付けにあたります。
筆者の実績を「明暗の世界」で読み直す #
夜の実績 3 杯がすべて 490 グローのぶちぶちコーラルだったのは、偶然ではなく理屈どおりでした。
- 夜 × 490 グロー = 3 杯: 暗い海で、イカの視感度ピークの光を自力で出せる唯一の系統。明暗コントラスト最大の選択を、当時の筆者は「なんとなく光るから」で選んでいました
- 昼のムラムラチェリー沈黙: 「イカはピンクが嫌い」なのではありません。そもそも色は見えていない。効くかどうかは紫外線発光の明るさと状況の問題で、実績ゼロをカラーのせいにできないという整理とも矛盾しません
- 金テープは「金色」に見えていない: 反射の強い明るいボディとして機能していると考えるのが自然です
ちなみにイカの眼と脳の位置関係は締め方の記事で図解しています。あの小さな脳と大きな眼のセットが、明暗特化の高性能センサーです。
カラー選びはどう変わる?実用の結論 #
「何色が釣れるか」ではなく「どんな明るさとシルエットを、いつ見せるか」で選ぶ。これが色盲説に立ったカラー選びです。
- 下地 (光の演出) を軸に選ぶ: 夜は発光かシルエット、明るい時間は紫外線発光や反射。下地 4 系統の使い分けは、色盲説から見てもど真ん中の正解です
- 布の細かい色の差に悩みすぎない: イカに届いているのは明暗パターンです。「ピンクかオレンジか」で 30 分悩むより、時間帯に合う下地を投げる方が理にかなっています
- 人間側の価値も正直に認める: 好きな色は集中力と継続を生み、目立つ布色は自分がエギを見失わないために役立ちます。「釣り人のためのカラー」も、巡り巡って釣果です
イカの世界を想像しながらカラーを選ぶ。46 本の使い分けが、少し科学の顔をしてきます。
まとめ: イカは色盲でも、カラーには意味がある #
- イカは色を識別できないとする説が有力。公式も「明暗の差を感じとる機能に特化」と明記しています
- 効いているのは色相ではなく明暗コントラスト・波長・発光・偏光。カラーは「光の演出」のバリエーションです
- 490 グロー = イカが最も感知しやすいとされる 490nm の光。筆者の夜の 3 杯はすべてこの発光でした
- 実用の結論は「時間帯と状況に合う明暗・発光を選ぶ」。下地 4 系統の使い分けは理論的にも正解でした
- そして「人間が信じて投げ続けられる色」の価値も、正直に認めていいと思います
よくある質問
イカは色盲というのは本当ですか?
490グローとは何ですか?
赤テープのエギが夜に効くのはなぜですか?
イカに色が見えないならエギのカラーは意味がないのですか?
エギのカラーは結局どう選べばいいですか?
about the author
マグロキャスティングを軸に、ジギング・エギング・ショアの実釣を本音で発信。2018 年再開、相模湾を主戦場に活動中。



